ニセ薬と刑罰

ニュース 平成二十九年(2017年)三月、奈良県と奈良市は7日、偽造品を扱っていた薬局チェーン「関西メディコ」(同県平群町)に対し、医薬品医療機器法に基づく改善措置命令を出した。命令を受けたのは、同社と同社が運営する県内の「サン薬局」3店舗。

ニセ薬は死罪
生薬、売薬が盛んになるにつれ、高価薬のニセものを売りつけて暴利を貪る業者もあったようだ。享保十五年(1730年)十二月、品川に住む丸屋七兵衛なるもの、桔梗根を煎茶にて染め、これを人参と称して売りさばいて捕らわれた。判決は引き回しの上品川御仕置場で死罪となっている。

水牛の角をウサイ角と称して売った者がいた。これは害がなくてキキメもさして変わらないという問屋の証言もあったが、薬種商売の身分にて不届きに付「遠島」の処分を受けている。

遠島えんとう 江戸時代,幕府および一部の藩において行われた刑罰の一つ。 中国法系の流刑とは異なり,年期を定めず島に配する制度。『 公事方御定書』によれば,江戸よりの囚は,伊豆七島へ,京大坂,西国中国よりの囚は,薩摩五島,隠岐国,壱岐国,天草郡などへ配流することとなっていた。

さらにこれは再吟味されクスリの特殊性重要性にかんがみて、引き回しの上死罪と記録されている。

天瓜粉(あせしらず)をオランダ秘法の薬「白午黄?」と称して売ったものについて、無害とはいえ不届きなりとして入れ墨の上「外払」となったが、これも再吟味され引き回しの上死罪となった。

えど‐ばらい〔‐ばらひ〕【江戸払】
江戸時代の刑罰の一。江戸市内に居住を許さず、品川・板橋・千住・四谷の大木戸、および本所・深川の外に追放するもの。→江戸十里四方御構(おかまい)

公事方御定書(くじかたおさだめがき、くじがたおさだめがき)は、江戸幕府の基本法典。享保改革を推進した8代将軍・徳川吉宗の下で作成され、1742年(寛保2年)に仮完成した。上巻・下巻の2巻からなり、上巻は司法警察関係の基本法令81通を、下巻は旧来の判例に基づいた刑事法令などを収録した。特に下巻は御定書百箇条(おさだめがきひゃっかじょう)と呼ばれている。
この66番目に「毒薬並びに似せ薬種売御仕置之事」がある。

毒薬売リ候モノ引廻ノ上獄門
一 似セ薬種売リ候モノ同断死罪
徳川家御定書百ヶ条

これは旧法の法制(雑律)
「凡そ毒薬を以て人を薬し及売る者は絞。即ち売買して未だ用いざる者は近流・・・」をそのまま踏襲したものといえるであろう。

以下WIKI
死罪 (律令法)
死罪(しざい)とは、律令法の五刑(五罪)の一つ。最も重い刑罰で受刑者の生命を奪う生命刑である。日本の大宝律令・養老律令では、単に「死」と記されている。別名として大辟罪(だいへきざい)・死刑(しけい)とも呼ばれる。今日の死刑という呼称もここに由来している。

古代の日本においては「ころすつみ」・「しぬるつみ」という言葉が存在する。これは今日の殺人罪ではなく、死をもって以外に浄化出来ない行いを指していると考えられている。中国の正史である『隋書』倭国伝には、殺人・強盗・強姦は全て死(罪)に処せられたことが記され、また『日本書紀』にも斬(斬首刑)・絞(絞首刑)・焚(焚刑)の3種が存在していた事が記されている。

絞は受刑者を棒に縛りつけて2本の綱で首を挟みこれを左右逆方向に刑吏が縛り上げる事で窒息死させ、斬は刀をもって首を切り落とした。死罪の執行は市で行って公衆に公開し、刑部省の他に弾正台・衛府の官人が立会い、万一これらの立会人が受刑者の量刑に疑義を挟んだ場合には一旦中断して天皇への奏聞を行って判断を仰いだ

獄門(ごくもん)とは、江戸時代に庶民に科されていた6種類の死刑の一つで、斬首刑の後、死体を試し斬りにし、刎ねた首を台に載せて3日間(2晩)見せしめとして晒しものにする公開処刑の刑罰。梟首(きょうしゅ)、晒し首ともいう。付加刑として財産は没収され、死体の埋葬や弔いも許されなかった。

現代の薬事関係法規と違反者への処罰(量刑)を考えると、江戸時代の判決(引き回しの上死罪)はにわかに信じがたい。
水牛の角はウサイ角と効果も違わなと問屋が証言しているし、健康被害があったわけでもない。現代であれば実刑にはならない程度の処分に違いない。

専門職の信用
これほどの重刑罰が適用されたのは、今日のように医薬品の分析ができない時代においては、「専門職の信用」だけが品質の担保であったからだろうと思う。

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