未病を治す/妊娠とくすり

旧HPのBLOGを再掲載します

未病を治す

未病(みびょう)という用語は、『黄帝内経』で初めて使用された。
「聖人は既病を治すのではなく、未病を治す」
既病(きびょう)とは、既に症状が出ている状態。『黄帝内経』では未病とは病気(病原体)は体内にあるのに、症状が体表面に出ていない、しかし治療しなければ早晩発症が必須なる状態をさす。(ウィキペディア・黄帝内経より)

薬局の役割は、保健(病気の予防)に重きを置くのが「医療機関」と異なる点で、未病という考え方は薬剤師の立ち位置にぴったりくる。
未病を口実に似非科学を説いて健康食品を売りつけるような商売も成立してしまうという問題点もあるが、もう少し踏み込むと、医療に於いても「副作用という病気」を防ぐことが薬剤師の最も重要なの仕事の一つだから、まさに未病こそ薬剤師の仕事なのだ。

東洋医学的な考え方では、人が生きていることを「全体的に」捉え、生命の営みを緻密に診ていた。そこで得られた知見が示すのは、人と自然の関係、臓器同士の結びつき、心と身体との関連といったことであった。病気だけを問題にするのではなく、その人の習慣や感情の傾向、食事、またはその人の住んでいる土地、季節などとの関わりから、総合的に診ていた。人が健康で寿命をまっとうするためにはどのようにあるべきか、哲学の観点から病気を考えていた。こうした哲学や価値観は、これからも薬剤師にとって重要なものであり続けるだろう。

一方、未病を治すという考え方は西洋医学でも注目されてきた。「先制医療」の提言は、少子高齢化が進み医療費負担の高騰が続くわが国で社会的な問題となりつつある疾患、特に加齢に伴ってリスクが増大する疾患にいかに対応するかという点にそもそもの問題意識がある。アルツハイマー型認知症、2型糖尿病、骨粗しょう症、がん、などは各個人が持つ遺伝素因とさまざまな環境要因の長年にわたる複雑な影響によって発症に至る。またいったん発症すると現在の医療技術では根治が難しいものも多いため、いかに早い段階で病気の発症リスクを高い確率で予測し、治療的介入をするかが重要になる。

近年の基礎医学研究の進歩により疾患の病因や発生病理の解明、ならびに早期診断や薬の有効性評価などに用いる客観指標(バイオマーカー)に関する技術開発などが進んできている。よってこれらの現状を踏まえ、「先制医療」においてはバイオマーカーを用いた病気の早期診断、およびその結果に基づき適切に対処するための予防治療技術(医薬品など)に関する研究、応用化が必要と考え、そのために必要な研究開発課題を提案した。

まだ、自分の頭では充分に整理できていないが、このへんが「東洋医学と西洋医学の統合」というお題の一つの答えではないかと思う。

妊娠とくすり

昨日、新宿で行われたフォーラムに参加しました
妊娠(授乳)と薬については、データやエビデンスが乏しく
医師からの照会に低レベルのやりとりをせねばならない現実に薬剤師は悩んでいます
厚生労働省の事業で「妊娠と薬情報センター」が設立されて6年になりました。米国カリフォルニア大やカナダのトロント大で行われてきた「相談を受けてエビデンスを蓄積してゆく」というプロジェクトを日本では「妊娠と薬情報センター」が行っています。http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html

今回は「精神神経系薬剤のトレンドと安全性」をテーマに
・セミナー 座長: 国立成育医療研究センター妊娠と薬情報センター副センター長 渡邉 央美
1 「女性のうつ病の特徴」 順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院 メンタルクリニック 教授 鈴木 利人 2 (ランチョン) 「抗うつ薬が胎児、新生児に及ぼす影響」 東京大学医学部小児科 妊娠と薬情報センター 伊藤 直樹
・シンポジウム 座長: 国立成育医療研究センター母性医療診療部長 妊娠と薬情報センター長 村島 温子
「OTIS(北米催奇形性情報サービス)歴史と展望」*同時通訳あり カリフォルニア大学サンディエゴ校 医学部小児科教授 Christina D.Chambers 「最新の双極性障害の治療?情動安定化薬(抗てんかん薬)の使い方?」 千葉大学大学院医学研究院精神医学 准教授 渡邉 博幸 「授乳期の精神神経系薬剤使用:その安全性と問題点」
トロント大學・トロント小児病院 小児科教授 伊藤 真也

受講者には薬剤師も多くいました。
まだまだ手探り状態ですが、日本人の生真面目さで続ければやがてトロント大を追い越すと伊藤先生は話されていました。薬剤師がもっと研究や研修に参加してゆけば、リスクコミュニケーターとしてお役に立てるはずです。

日ノ出町駅 まちかどの薬局 日の出薬局 薬剤師 高橋洋一

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