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外科病棟には抗生物質に独特の臭気が満ちている
新聞記事 「風邪に抗生物質投与は控えて」 厚労省が手引書 2017/3/6 20:35
厚生労働省の有識者委員会は6日、軽い風邪や下痢の患者に対する抗生物質(抗菌薬)の投与を控えるよう呼びかける手引書をまとめた。抗生物質を使いすぎると薬剤耐性菌が増え、治療に有効な抗生物質が将来なくなる事態が懸念されているため。早ければ今月中にも、日本医師会などを通じて全国の医療機関に配る。
手引書では、一般的な風邪の原因となるウイルスには抗生物質が効かないことから、「投与を行わないことを推奨する」とした。医師が患者に説明する際に「抗生物質は効かない」と告げた上で、症状が悪化する場合は再受診するよう指示しておくことが重要だとしている。
一方、ふだんより排便回数が1日3回以上増える急性下痢症は、ウイルス性、細菌性にかかわらず自然と良くなることが多い。そのため安易に抗生物質を使わないよう呼びかけている。
厚労省によると、薬剤耐性菌への対策を取らなければ、2050年には同菌によって世界で年1千万人が亡くなるとの推計もある。(記事引用終わり)
外科病棟には抗生物質に独特の臭気が満ちている。すべての患者に抗生物質の注射剤が投与されていた。私が病院薬剤師だった昭和50年代、セファメジン、ケフリンのバトルが繰り広げられていた。ある日、一つの病棟の処方がすべてセファメジンからケフリンに変わり、暫くするとその逆の現象が起きた。これと言った理由はない、私たちは(シオノギのMRが回ったな・・・)暫くして(藤沢が巻き返したな・・・)と思うのだった。
40年も昔とは言え、当時最新鋭の手術場で行われる無菌的な手術に術後感染防止のために抗生物質が<全ての患者に>必要であるのかは極めて疑問だと思っていた。
こうした抗生物質製剤は、次々に高容量の製品が発売されその新製品に切り替えられていった。うろ覚えだが、当時、全世界で製造される抗生物質の1/4が日本で消費される、という記事を読んだ覚えがある。
術後投薬の処方というのは病棟ごとに決められたレシピみたいなもので、患者の様態や重症度、腎機能などが考慮されることすらなかった。レジデントとなった医師は、配属となったその日からなんの疑問も持たず、ひたすらこの定食レシピを書くことから教えられるのだった。
薬剤師による教育改革
薬剤師教育のめざすところ
それが「あるべき姿」なのだとしたら、われわれ薬剤師がもっと主張し、できれば改革の主導権を持つべきではないか。
ステークホルダーには
産業界もあるし行政、大学、学会もあり、それらが思惑や利害で複雑につながっている。
私大薬学部が急増した背景には、薬剤師の採用に苦慮する業者(ドラッグ、調剤薬局チェーン)がある。彼らは大学との繋がりを強めてきた。一部の薬学部の酷い商売も聞こえてくる。大学には国試予備校が入り込み、かかりつけ薬剤師に絡んで様々な「業者」が生涯教育に参入する。
行政と言っても厚労と文科とはいつも噛み合わない。薬局薬剤師の目から見ると、文科は国立大学病院の意見に方よりがちになる。酷かったのは国立大学(病院)の第二薬局問題で、文科は第二薬局を支持する行動をとったことだ。
今回の一連の改革で初めに「あり方」を提言した日本学術会議もあるし、アカデミア寄りの日本学会、薬剤師寄りの日本薬剤学会などそれぞれが違う意見だ。
私たちは海外の事例も参考に収集している。大学は基礎科学だけを扱い、薬剤師教育をしない国もある。その場合は薬剤師会が国に対する責任を持って職能教育にあたることになる。
それぞれが勝手なことを言っているステークホルダーを集約し、国家戦略として国民のための薬剤師教育を行わないと、薬剤師はいつもカモられるばかりだ。
日の出薬局 高橋洋一
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