その薬局は、薬剤師は信用できるか?/調剤報酬が誰の懐に入るか

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その薬局は、薬剤師は信用できるか?

<詐欺>大阪の薬局経営者ら逮捕 調剤報酬1430万円詐取
調剤報酬約1430万円を詐取したとして、大阪府警生活環境課は25日、大阪市住吉区の「のぞみ薬局」経営、原田実(65)=堺市堺区=と同薬局営業部長の東野晴之(57)=奈良県葛城市=の両容疑者を詐欺容疑で逮捕した。2人とも容疑を認めており、原田容疑者は「お金欲しさに架空請求した」と供述している。 逮捕容疑は2012年12月?15年2月、奈良県内の二つの病院に計24回通院し、うその病状を告げて院外処方箋を受け取った。その後、のぞみ薬局で調剤したと偽った調剤報酬明細書(レセプト)を申請。葛城市から計23回にわたり調剤報酬計約1430万円を詐取したとしている。

薬剤師会の検索システム
信用について大阪府薬剤師会(府薬)の「保険薬局検索システム」を使ってみる。
「このサービスで提供する薬局の情報は、一般社団法人 大阪府薬剤師会の会員が情報(保険薬局カード)をインターネットに掲載することを同意した保険薬局の情報です。」
とあるから、薬剤師会会員以外は掲載されない。経営者・薬剤師の原田は大阪府薬剤師会=日本薬剤師会の会員のように見える。府薬のシステムで「のぞみ薬局」を検索すると23軒がヒットする。これらが同一企業のチェーン店なのか、たまたま同一の名称なのかは分からない。新聞記事の「大阪市住吉区」には、2軒の「のぞみ薬局」があるが、これらの系列関係もわからない。もし、まったく関係のない薬局であれば、新聞記事はたいへんな迷惑である。

行政の検索システム
薬局リストは薬剤師会の主要な仕事だった。医薬分業の草創期には、処方せん調剤に応需できる薬局を市民や医療機関に知らせる、という目的があった。調剤応需が当たり前になり、さらに都道府県行政が「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の第8条の2で定められた薬局情報を公表し、住民・患者の方が自分にあった大阪府内の薬局を検索及び適切に選択することを支援するようになっている。
大阪府(行政)のシステムで「のぞみ」を検索すると32軒がヒットする。大阪府薬剤師会の薬剤師会の会員でない薬局は9軒あるということになる。府薬のシステムには開設者氏名が記載されていない。

薬局、薬剤師の信用について比較する
行政のシステムには開設者氏名が記載されている。住吉区にある「のぞみ薬局」は開設者がどちらも保田 裕司(やすだひろし)とされている。新聞記事にある原田実とは違う。

薬局開設者の氏素性
私は古くから一か所で薬局を経営しているので、地域内の薬局経営者の氏素性をだいたい知っている。薬局経営者のなかには極めて怪しげな人物もいる。法人登記された雇われ社長とは別に、実質的な経営者が存在することも知っている。巨額リベート、証券取引法違反、無資格調剤、薬剤師不在、薬歴未記載などで社会問題となった企業もある。企業買収で成長したチェーンは、買収された薬局の看板をそのまま使っているから、経営者がだれなのか一般の市民には知りようがない。

薬剤師会の薬局リスト
行政の薬局情報提供システムが存在することを前提にして
薬剤師会の提供するリストは、薬局の信用、会員の倫理と会員薬局の公益性の担保を目的にするべきではないだろうか。

調剤報酬が誰の懐に入るか

医薬分業政策
薬剤師のインセンティブ「調剤報酬」が【誰の懐】に入るか、に注目して考えてみよう。

薬剤師法の定めた原則
薬剤師(資格者・自然人)でなければ調剤をしてはならない【個人開局】

しかし、
薬剤師を雇用して株式会社(法人)で薬局を経営すれば大規模、効率的に調剤報酬をかき集めることができる【調剤薬局チェーン】

さらに
患者負担金にポイント付与すると、調剤<専門>薬局ではポイントを患者負担金の支払に使えないが、ドラッグストアではポイントで食品、日用雑貨などが買える【ドラッグストアチェーン】

その結果
薬局4社の16年度、純利益最高 
大手ドラッグストアの調剤事業の売上高:ウエルシアHDはCFSコーポレーションの子会社化により調剤売上高が1.5倍強の764億円まで拡大。スギHDは700億円に迫り、ココカラファインは500億円、マツモトキヨシHDは400億円をそれぞれ突破。大手調剤薬局上位に食い込みつつある。

指導
国(厚生労働省)が公的医療保険制度、社会保障政策の趣旨から外れるからやめろ、と言ってもやめない。 逆に善意に対する国家の強権と非難、自分たちを被害者と装う。

終わりの始まり
だったらもう医薬分業政策(調剤報酬・インセンティブ)自体をやめる、という判断になる。

日の出薬局 薬剤師 高橋洋一

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