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地域医療管理学
10年以上まえのことだろうか
大学からシラバスというものが必要だと言われたが、
「わからないから適当に書いて」と教授(同級生)に頼んだ
僕の講義には「地域医療管理学」という、聞いたこともない学問の名前がついた
新型インフルエンザの騒動ではCDC(アメリカ疾病予防管理センター)の統計やガイドラインが、日本の厚生省よりも遥かに優れたものであることを我々は実感した
昭和49年から始まった日本の医薬分業政策は、
薬局や薬剤師本来の機能・形態から「地域」や「疾病管理」を引き去った残余領域
すなわち「門前・調剤専門」の薬局を増やす結果となった
日本薬剤師会は、分業初期には門前薬局を批判していたが
会員が相次いで門前に出店することから次第にトーンダウンし、面分業、かかりつけ薬局さえ言わなくなってしまった
最近では調剤医療費の増大に対して「医薬分業は本当に国民の役に立っているのか?」という批判が強まっている。
これからの薬局薬剤師は「地域」で「疾病管理」を行うことなるか?
それとも、本質を欠いたまま残余領域でまだ「調剤」をやり続けるのか?
インターネット販売
在宅医療に欠かせないのは医療用麻薬の供給体制だ。もちろん厳重な管理が行われるから、煩雑な事務手続きを厭う薬局もある。途中で患者さんが亡くなってしまうこともあり、薬局にとっては不採算な医薬品である。
医薬品が自由に買えるのは便利であるが、麻薬まで自由に買えて良いものとは、良識にある人は思わないだろう。しかし、実際にインターネットを覗いてみれば、ありとあらゆる医薬品が手に入る。素人判断で使えば、「重大な副作用」から生命に危険が及ぶような医薬品が並んでいるのに驚かされる。
医薬品規制は国により制度の違いがある。例えば、日本の薬局で処方せんなしに買える薬が、外国では処方せんなしでは買えない。その逆もある。ある経口避妊薬は日本で処方される量よりも、インターネットで個人輸入される量の方がはるかに多い。
医薬品のインターネット販売が声高に叫ばれている。
やがて医薬品規制に関する国際的な条約などで整合性が図れる時代が来るとは思うが、日本国内で規制されている医薬品を、インターネットで海外から購入するなんてまともな人間がすることとは思えない。医薬品は適正な規制がなければ、公衆衛生上に大きな危害をもたらす。サリドマイド、スモン、エイズなどこれだけ大きな薬害事件を経験して、国民は何を学んだのだろう。
アメリカでは医薬品が比較的自由に手に入る。在宅医療も、麻薬の供給も進んでいる
アメリカ疾病管理センターはこんな報告をしている。
●アメリカで拡大するヴァイコデン乱用
オピオイド鎮痛剤の過量摂取による死亡が、過去10年で3倍に増加した・・・2011年末、米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC).が発表したデータは、アメリカの処方薬乱用問題がますます深刻化している実態を浮かび上がらせました。
推計では、2008年中に、処方薬のオピオイド鎮痛剤による過量摂取で、およそ14800人が死亡したとされています。1999年の死亡数はおよそ4000人で、この10年で3倍強に増加したことになります。その背景にあるのは、オピオイド系鎮痛薬の大量処方で、CDCによれば、2010年に全米で処方された沈痛薬の総量は、アメリカ人の全成人人口の1か月分の投薬量に相当するということです。
(1)オピオイド鎮痛薬による過量摂取死に関するCDCの報告
■Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)(November 4, 2011)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6043a4.htm?s_cid=mm6043a4_w
(2)AP通信社の記事(CBSニュース)
■High prevalence of painkiller sales turning America into painkiller nation(April 5, 2012)
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-57409827-10391704/analysis-high-prevalence-of-painkiller-sales-turning-america-into-painkiller-nation/?tag=mncol;lst;8
日本は超高齢社会を向かえ、在宅医療、ターミナルケアなど深刻な問題を抱えている。
在宅で安心して看取りを行えるように、節度のある処方と厳格な管理に基づく、医薬品の供給がなされるよう法整備が必要だ。
日の出薬局 薬剤師 高橋洋一
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